『大穴』、という邦題よりも原題の『再配当(Odds Against)』は、障害者である自分にとって世の中で生きていく上での一つの指針にもなっているのだけれど、それはあくまでも此方の勝手な考えであって氏の著作を通して見ればそこにあるイギリス階級社会故の物語… かつて大沢在昌氏は「青い血の物語」と評したが流石に上手い表現ですよね… 如何に下賎の者に貶められようと一時己が身を窶す事になろうとも心が汚れる事も傷つく事も赦さない、まして折れ倒れる事など、という物語でもあり、実際続編である『利腕』で化物ではあるけれども何所か人である部分があったシド・ハレーが所謂ヒーローになってしまったが故に完成度も上がったし名台詞も増えたけれども私的にはどうにも駄目で、以降の作品もいくつかは読むうちに疎遠になって既に15年近くになるけれども… それでも、今でも私の心の柱の何がしかになっている作品を書いた作家が鬼籍に入られるというのは、やはり寂しいもので… そういえば訳者の菊池光氏も既に鬼籍に入られていたっけ…
さよならディック・フランシス。さよなら、さよなら、さよなら。