故・立川談志が劇場で『雨に唄えば』を観て大層気に入り、ジーン・ケリーが素晴らしいと言っているのを聞いた先代の三遊亭円楽が
「君はフレッド・アステアは観たのか?」
と尋ねて。未見だったのを告げると円楽は
「アステアも観てないで素晴らしいだなんて」
と笑ったので早速観に行った談志。後日、
「アステアは観た?」
と円楽に尋ねられて
「観た。」
「どうだった?」
「確かにアステアは素晴らしい。だけど私はジーン・ケリーが、それも『雨に唄えば』のジーン・ケリーが好きなんだ」
と答えたらば、
「解ってないねぇ」
と円楽は笑ったんだそうな。でも、そう思った気持ちは変わらない、と談志は言った。
私も、ここいらの区別っか線引きみたいなのはしっかりしてたいと思う。特に歳とって蓄積がある分、どうしても最近の作品に限らず様々な物事に厳しく辛くなってしまう部分があるのは承知しているんだけども、やっぱり「いい・悪い」と「好き・嫌い」の区別だけはキチンとつけた上で、としたいよなぁ… と改めて思う誕生日。まぁ、三十路前から個人的に数え年制度でやってるんであんま感慨とかは無いんですけど、戒めを… かつて卑屈且つ傲慢な全共闘世代みたいにはならぬぞと誓った自分を… 忘れないようにするには悪くはない日ではないかな… っとぉ。